「この業務は〇〇さんしか分からない」「担当者が休むと誰も対応できない」。中小企業では、特定の人しか知らない業務ノウハウに依存している状態、いわゆる属人化が珍しくありません。属人化は普段は問題になりにくい一方、担当者の退職や異動、長期休職のタイミングで、業務が止まるリスクとして表面化します。

属人化対策としてのマニュアル化は、作業手順を書き出すだけでは不十分な場合があります。手順の背景にある判断基準や、例外が起きたときの対応まで含めて整理することが、実際に使えるマニュアルを作るうえで重要になります。

属人化が起きやすい業務の特徴

次のような特徴を持つ業務は、属人化が起きやすい傾向があります。

こうした業務は、担当者本人にとっては「当たり前の判断」であっても、他の人から見ると再現が難しい場合があります。

マニュアル化の前に整理する観点

作業手順と判断基準を分ける

「何をするか」という手順と、「なぜそうするか」という判断基準は、別のものとして記録する必要があります。手順だけを書いても、状況が変わったときにどう対応すればよいかが分からなければ、実務では使いにくいマニュアルになります。

例外対応を記録する

通常のパターンだけでなく、「こういう場合はこう対応している」という例外的な判断を記録します。属人化した業務ほど、例外対応の経験が担当者に集中している傾向があるため、この部分の聞き取りが特に重要です。

判断の根拠を具体例で残す

「お客様の状況に応じて柔軟に対応する」のような抽象的な表現だけでは、他の人が同じ判断をすることは難しくなります。実際にあった具体的な場面と、そのときの対応をセットで記録すると、後任者が参考にしやすくなります。

更新する仕組みも決めておく

マニュアルは作成した時点から業務内容が変わっていくため、誰が、いつ、どのように更新するかを決めておく必要があります。更新担当者を決めずに作成すると、時間が経つほど実際の業務と内容がずれていきます。

マニュアル化の進め方

手順1:対象業務を選ぶ

すべての業務を一度にマニュアル化するのではなく、業務が止まった場合の影響が大きいもの、代わりに対応できる人がいない業務を優先します。退職や異動の予定が決まっている場合は、その担当者が持つ業務から優先的に選びます。

手順2:担当者の作業に同行してヒアリングする

本人に手順を書いてもらうだけでなく、実際の作業に同行し、「なぜこの順番で進めるのか」「なぜこの判断をしたのか」を質問しながら記録します。本人が意識せずに行っている判断ほど、同行しないと見えてこない場合があります。

手順3:手順・判断基準・例外を分けて記録する

ヒアリングした内容を、通常の手順、判断基準、例外対応に分けて整理します。すべてを1つの文章にまとめるより、場面ごとに分けて記録する方が、後から見返しやすくなります。

手順4:別の担当者が試してみる

作成したマニュアルを使って、本人以外の担当者が実際の作業を試します。記録した内容だけで対応できない部分が見つかれば、そこが聞き取りの不足している箇所です。

手順5:更新のタイミングと担当者を決める

業務内容や取引先の対応が変わったときに、誰がマニュアルを更新するかを決めます。更新のタイミングを定期的な業務の見直しに合わせておくと、更新が後回しになりにくくなります。

マニュアル化だけでは解決しない場合

マニュアルを作成しても、「どこに何が書いてあるか分からない」「必要なときに探せない」という状態では、属人化の解消にはつながりにくくなります。マニュアルの量が増えてきた場合は、資料を整理し、必要な箇所を探しやすくする工夫も必要です。

資料の整理方法についてはAIナレッジ検索のための資料整理の進め方、マニュアルを検索しやすくする考え方については社内マニュアルをAI検索できるようにする方法で解説しています。

AI検索と組み合わせる考え方

マニュアル化した内容が増えてきた場合、社内マニュアルのAI検索と組み合わせることで、必要な情報を探す時間を減らせる場合があります。ただし、AIが参照する元の資料が整理されていなければ、検索の精度も上がりません。属人化対策としてのマニュアル化は、AI検索を導入する前の土台作りとしても位置づけられます。

新人教育の負担を減らす観点については新人教育を社内マニュアルのAI検索で支援する方法も参考になります。社内マニュアルAI検索の全体像は社内マニュアルAI検索、社内マニュアルAI活用ガイドで確認できます。

30分の無料相談

「誰かしか分からない業務があるが、何から整理すればいいか分からない」という段階でも相談できます。30分の無料相談では、対象となる業務や担当者の状況を伺い、優先して整理すべき業務と進め方を整理します。

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よくある質問

ベテラン社員の経験や判断は、言葉にして残せますか?
完全に同じ判断を再現することは難しくても、「どのような場合にどう判断したか」という具体例を記録しておくことで、後任者が判断の参考にできる状態を作ることができます。すべてを一度にルール化しようとせず、よくある場面から記録を始めることをおすすめします。
マニュアル化と業務の棚卸しは何が違いますか?
業務の棚卸しは、どの業務が存在し、誰が担当しているかを把握する作業です。マニュアル化は、その中で特定の担当者しか分からない業務について、手順や判断基準を記録する作業です。属人化対策では、まず棚卸しで対象業務を絞り、優先度の高い業務からマニュアル化を進める流れが現実的です。
退職までの期間が短い場合、何を優先すればよいですか?
退職までの期間が短い場合は、すべての業務を網羅するのではなく、業務が止まると影響が大きいもの、他の人が代わりに対応できないものを優先してヒアリングし、記録することをおすすめします。

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