業界別AI / 公開 2026/10/4
オペレーター支援AIの設計|通話中にAIをどう活かすか
通話中のオペレーターをAIで支援する仕組みの考え方と、設計時に検討すべき対象業務、情報源、人の判断の残し方を解説します。
コールセンターのオペレーターは、通話中に相手の話を聞きながら、社内マニュアルやFAQを探し、入力システムを操作するという複数の作業を同時に行っています。オペレーター支援AIは、このうち「探す」「記録する」といった作業の一部をAIで支援し、オペレーターが応対そのものに集中できるようにする仕組みです。
この記事では、オペレーター支援AIでどこまでの業務を支援できるか、設計時に検討すべき項目、導入を小さく始める進め方を整理します。
オペレーター支援AIとは
オペレーター支援AIとは、通話中または通話直後に、オペレーターの作業を助ける情報やたたき台をAIが提示する仕組みです。応対そのものを自動化するチャットボットとは異なり、人が応対する前提のうえで、その周辺作業を支援する位置づけになります。
主な支援の方向性には、次のようなものがあります。
- 通話内容をリアルタイムで文字起こしし、聞き直しの手間を減らす
- 顧客の質問内容に関連しそうなFAQやマニュアルの該当箇所を検索して表示する
- よくある質問への回答の下書きを提示し、オペレーターが確認して伝える
- 通話中に出てきた要点を記録し、通話後の入力作業の下書きにする
いずれも「AIが提示し、オペレーターが判断する」という構成が基本になります。AIの提示内容をそのまま顧客に伝えるのではなく、オペレーターが状況に応じて選ぶ・修正するという工程を残すことで、誤った案内のリスクを抑えやすくなります。
支援の対象になりやすい業務
すべての通話を対象にするのではなく、支援が効果を出しやすい業務から検討することが重要です。
繰り返し聞かれる質問への対応
同じような質問が繰り返し発生する業務では、過去のFAQやマニュアルの該当箇所をAIが検索して提示することで、オペレーターが資料を探す時間を減らせます。社内FAQをAIで整える方法で触れているように、FAQ自体の整理が前提になります。
新人や経験の浅いオペレーターの対応
経験の浅いオペレーターは、マニュアルを探す、過去の対応方法を確認するといった作業に時間がかかりやすい傾向があります。AIが参考情報を提示することで、経験者に確認する頻度を減らせる可能性があります。ただし、提示内容を鵜呑みにせず、不安な場合は人に確認する運用を残すことが重要です。
通話内容の記録・入力作業
通話中に出てきた要点をAIが記録しておくことで、通話後の入力作業を下書きから始められます。この部分はコールセンターの後処理を自動化する方法でも詳しく解説しています。
支援の対象にしにくい業務
次のような業務は、AIによる支援の設計がより難しく、慎重な検討が必要です。
- クレーム対応や感情的な対応が必要な通話(AIの提示内容が状況に合わない可能性がある)
- 個別の契約内容や特殊な事情の判断が必要な対応(一般的なFAQの範囲を超える)
- 社内でもまだ対応方針が固まっていない新しい問い合わせ(根拠資料自体が存在しない)
これらの業務では、AIによる情報提示よりも、人への確認体制を整えることの方が優先度が高い場合があります。
オペレーター支援AIの設計で検討する項目
1. どの情報を根拠にするか
AIが提示する情報の根拠を、社内マニュアル、FAQ、過去の対応履歴のどれにするかを決めます。根拠資料が古い、または表記がばらついていると、提示される内容の精度に影響します。RAGを社内検索へ使うときの考え方では、根拠資料を使ってAIが回答する仕組みの基本を解説しています。
2. どの画面・タイミングで提示するか
通話中にオペレーターが見ている画面のどこに、どのタイミングで情報を表示するかを検討します。通話に集中している最中に情報量が多すぎると、逆に確認の手間が増えることもあります。
3. 人の確認・修正をどこに残すか
AIが提示した内容をそのまま使うのか、オペレーターが確認してから使うのかを明確にします。特に顧客への回答に関わる部分は、提示内容を参考情報として扱い、最終的な発言はオペレーターの判断に委ねる設計が基本になります。
4. 精度が低い場合にどう運用するか
AIの提示内容が状況に合わない場合、オペレーターがどう対応するか(無視する、別の資料を探す、管理者に確認するなど)をあらかじめ想定しておきます。想定がないまま導入すると、現場での対応にばらつきが出やすくなります。
小さく始める進め方
手順1:対象業務を1つに絞る
最初から全業務を対象にするのではなく、繰り返し発生する問い合わせのうち、負担が大きいものを1つ選びます。対象を絞ることで、効果を確認しやすくなります。
手順2:根拠資料の状態を確認する
対象業務に関連するFAQやマニュアルが、どの程度整理されているかを確認します。整理が不十分な場合は、支援AIの導入と並行して資料の見直しを進める方法もあります。
手順3:試験運用で提示内容を確認する
一部のオペレーターや一部の通話で試験的に運用し、提示される情報が実際に役立っているか、誤った情報が混ざっていないかを確認します。
手順4:運用ルールを決めて範囲を広げる
試験運用で得た気づきをもとに、提示内容の確認方法や、精度が低い場合の対応ルールを決めます。安定して運用できることを確認しながら、対象範囲を広げます。
まとめ
オペレーター支援AIは、応対そのものを自動化するのではなく、通話中や通話後の「探す」「記録する」といった周辺作業をAIが支援する仕組みです。どの業務を対象にするか、どの資料を根拠にするか、人の確認をどこに残すかを整理したうえで、負担の大きい業務から小さく試すことが、無理のない導入につながります。
コールセンター全体でのAI活用の考え方は、コールセンターにAIを導入する方法でも整理しています。Domani Luceのコールセンター向けAI活用支援では、現在の応対業務や使用している資料の状況を確認し、どの範囲から支援を検討できそうかを一緒に整理します。
30分の無料相談で確認できること
「オペレーター支援AIが自社の業務に合うか分からない」という段階でも相談できます。30分の無料相談では、現在の応対業務の流れや負担の大きい作業を伺い、支援を検討できそうな範囲を整理します。
よくある質問
- オペレーター支援AIは、応答そのものを自動化するものですか?
- 多くの場合、応答を完全に自動化するのではなく、文字起こしや資料検索の結果をオペレーターに提示し、最終的な判断や発言はオペレーターが行う構成にします。どこまでAIに任せるかは対象業務によって検討する必要があります。
- 既存のFAQやマニュアルが整理されていないと導入できませんか?
- 整理されていない状態でも始められますが、根拠資料が古い・重複していると、提示される情報の精度が下がります。対象範囲を絞り、よく使う資料から整理を進める方法があります。
- 小規模なコールセンターでも導入を検討できますか?
- 規模に関わらず検討できますが、対象となる通話件数や繰り返し発生する問い合わせの種類によって、効果の出やすさは変わります。まずは負担の大きい業務を洗い出すことから始めることをおすすめします。